読み書きができるには

こんにちは!早島事業所で作業療法士をしている中村です。今回のテーマは「読み書き」です。事業所に通っている子どもたちは小学生が多く、事業所に帰ってきたらまずは宿題をします。そんな子どもたちの中には、同学年の子と比べて学習の遅れがある子がいます。「音読がたどたどしい」「ひらがなを忘れてかけない」などなど

そんな子どもたちはやっぱり「勉強なんてつまんない」「僕はダメだ」と学習への興味や関心が無くなり、自己肯定感も低くなっている印象です。

こういった子どもたちに対して従来であれば「繰り返し学習」「なぞり書き」が考えられていました。しかし学習のつまずきの原因は多種多様で必ずともそれらの支援だけではうまくいかないことも多いでしょう。

今回は「ひらがなを書くこと」を分析してみましょう。

ひらがなを書くときに脳の中で起きることは?

①頭に浮かんだ文字の音を文字の形として変換するエンコーディング。(このとき文字のイメージを記憶して脳の中で記憶ができていないとダメ)

②書字の運動を頭の中で想起する。(書く順番はどうするか?どんな大きさにするか?)

③想起した情報は前頭葉(運動を命令する脳の部位)に運ばれて実際の書字動作として出力される。

といった感じで普段何気なくしている「書く」ことも、脳の中ではこういった処理をしているのです。

次に書字動作に必要な土台も見ていきます。

①姿勢の安定→身体の中心部の体幹や肩甲帯が安定していないと手のコントロールができない。

②触覚・固有感覚→文字は形、形の記憶には触覚や固有受容感覚がうまく働くことで記憶の定着がすすむ。書き順なども固有受容感覚によって定着が進んでいく。

です。ただ「書く」といったことでも色々な能力が必要となることがわかりますね。こういった原因をつき詰めると必要な療育がわかってきます。以下は例です。

●文字がなかなか書けない子→脳の中で音を文字に変換する「エンコーディング」が苦手?エンコーディングが苦手なのはまだ文字のイメージができていない可能性もあるか?文字イメージを定着させるためには「触覚」「固有受容感覚」などへのアプローチが足りていないためではないか。「触覚」や「固有受容感覚」を取り入れた文字のトレーニングをしてみよう。

●文字がくずれてしまう子→姿勢が安定していないため手のコントロールが出来ていない?文字の配置や文字の形成の記憶が曖昧ではないか→椅子やペンホルダーなどの選定で変えられるか?体幹部の固定性を育むトレーニングをしよう。感覚を使った文字イメージのトレーニングもしよう。

などといった発想ができます。以下の写真は早島で実際に文字のイメージを定着させるため行ったモールを使ったトレーニングです。ご覧いただきありがとうございました。